AD変換
概 要

アナログ信号をデジタル信号に変換すること。アナログ信号は時間的には連続的に変化し、値は無限の精度をもっている。これをデジタル処理するためには、まず一定時間おきの値を抜き出す「サンプリング」という操作と、取り出した値を有限精度で数値に置き替える「量子化」という操作を行う。この両方を行うのがAD変換という操作。
解 説
AD変換が最初に利用されたのは長距離電話です。AD変換器でPCM形式にして音声を伝送することで、それまでのアナログ伝送より各段に多くの音声回線を高い品質でひとつの電話線に多重化することができました。同じ信号をできるだけ小さいビットで送る方法を高能率符号化と呼びますが、PCMはアナログの性能を上回った最初の高能率符号化ということになります。
もちろんAD変換は劣化を避けることができません。しかし、サンプリングの歪はサンプリングの周波数を十分高くし、量子化の歪も量子化精度をあげることで十分下げられます。マイクロホンのダイナミックレンジが80dBを超えることはあまりありませんが、PCMのダイナミックレンジは16bitなら96dB、20bitなら120dBです。
- 1 サンプリング
時間変化するアナログ量を単位時間で区切って、各時点での値を読む。短い単位時間で沢山サンプリングすることをサンプリングレートが高いと言い、サンプリングレートはヘルツ[Hz]でAD変換の性能に記されます。 - 2 量子化
標本化で読んだ値をキリのいい数値に加工。キリのいい値として用意された数値(量子化レベル)が細かく刻まれているほど、元のアナログ信号に近い値を保持できます。これを「分解能が高い」と言います。 - 3 符号化
量子化した数値をコンピュータ用の2進数に変換。分解能が高いと2進数の桁数(ビット数)も増えます。ここから、分解能24ビットというようにAD変換の性能表記がされます。

実現できること
- ・音声のデジタル録音……音質の高いハイレゾ録音には性能の良いAD変換が必要です。
- ・デジカメのイメージセンサー……センサーに入ってきた光の強さをAD変換でデジタル化して記憶することで写真や映像を撮影します。
- ・スマートフォン内蔵の各種センサー……ジャイロ、加速度、地磁気、照度など、スマートフォンのセンサーには必ずと言っていいほどAD変換の仕組みが組み込まれています。
- ・自動車の先進安全機能……車線や車を認識するカメラ、接近を検知するミリ波レーダー、距離を測るLiDARセンサーなど、いずれもAD変換が用いられています。
- ・5G、Wi-Fi6などの無線通信……アナログで飛ぶ電波信号をデジタルに変換するAD変換は無線通信の重要な基礎技術です。
将来の展開
AD変換は各種センサー、オーディオビジュアル、通信など、さまざまな分野に不可欠な技術としてコンピュータ黎明期から発展してきた技術です。今後は超高速通信に向けた超高速AD変換や、IoTに向けた省電力駆動AD変換といった分野での発展が期待されます。