IPSJ情報処理カタログ #ジョーショリ

用語集

アクチュエータ

あくちゅえーたActuator

概 要

電気信号を物理的な運動に変換する部品の総称。もっとも広く知られているもののは「モーター」だが、水圧や油圧で動くもの、回転ではなく、上下左右運動するものなどもある。ロボットのような動きのあるものを作りたいときは、必須の部品。

解 説

アクチュエータは、電気信号を動きに変える部品です。「ステッピングモーター」「ソレノイド」などが代表的な部品です。ギアを組み合わせたり、水圧や油圧などを使って、より大きな力で動かしたりするものもあります。

モーターは、よく知られているように、指定した方向にずっと回し続けるものです。

ステッピングモーターは、指定した角度だけ回転するモーターです。中心に磁石があり、それを囲むようにコイルがあります。特定のコイルに電気を流して電磁石にすれば、引っ張られて、その位置に回ります。どのコイルに、どの順序で電気を流すのかを細かく制御することで、指定した角度だけ回します。ステッピングモーターは、工場で部品を指定した場所に運んだり、ネジ止めしたりするような、人間に似た動きをするロボットを作るためには必須の部品です。

この図では4つしかないが、もっと多くのコイルを並べたり、電気を流す順序を工夫したりするとで、より細かい角度でモーターを回転させることができる。

ソレノイドは、直線方向に押したり引いたりする部品です。ピンボールゲームでは、棒をバネで引いて玉をはじきますが、それと同じように、ピンの先端方向にモノを押したり、逆方向に引いたりして動かせます。たとえば、「音が鳴ると、缶のなかから人形が出てくるおもちゃ」などでは、缶の蓋を上方向に押し上げる機構に使われています。

産業用ロボットのような精密な動きをする用途には、アクチュエータの精度が重要です。アクチュエータは機械的な部品であるため、ある程度の誤差があります。そのため誤差を補正しなければ精密な動きにはなりません。高い精度が求められる場合、こうした補正は、「設置場所を動かす」など、ちょっとしたことでも必要になることがあります。

ここで言う補正とは、アクチュエータの取り付け向きや傾きなど物理的な調整も含みますが、アクチュエータに対する指示の値を少し変える場合もあります。――たとえば、「10」という値を与えると「10度回転する」という挙動のアクチュエータを動作させて、実際に測ったときに「9度」しか回転していないのであれば、10より少し大きな値を与えるようにする――というように、数値そのものを調整するというやり方もします。

こうした細かい数値の調整を人間がするのは煩雑なので、ロボットや工作機械では、自動的に補正値を調整する機構をもつものもあります。こうした調整機能のことを「キャリブレーション」と言います。

実現できること

  • ・プログラムでモノを動かす
  • ・ロボットなどの精細な動き

将来の展開

よりよい精度のアクチュエータが安価に提供されるようになれば、ロボットの価格は劇的に安くなります。またキャリブレーションなしで(もしくはほんの少しのキャリブレーションで)高精度な動きができるようになれば、環境が変わった際にも準備の手間が省け、活躍の場が広がるでしょう。

アクチュエータは、小型化・軽量化も進んでおり、将来、ロボットはさらに小さくなります。 小型化の先にあるものとして、「ナノマシン」の研究も盛んです。ナノマシンは、ナノメートル単位の大きさのとても小さなマシンです。体内に入って作業できるぐらいの大きさで、医療分野での活躍が期待されています。

ナノマシンに使われるアクチュエーターは分子レベルで動く装置であるため、モーターとは少し性質の異なるものですが、「何か動かす」という目的は同じです。

PAGE TOP