IPSJ情報処理カタログ #ジョーショリ

用語集

自動運転車

じどううんてんしゃAutonomous Car/Self-driving Car/Robotic Car

概 要

人間に代わって、自動操縦できる車。完全に自動運転が可能なものから、人間の運転を手助けするものまで、いくつかのレベルがある。

解 説

自動運転車は、アクセルやブレーキ、ハンドルやウインカーなどの操作をコンピュータシステムによって自動化し、人間が操作しなくても道路を自動で走らせるようにしたものです。

自動運転車は、大まかに「自車位置を把握するGPS」「現在位置を正確に把握できる高精度地図」「周りの情報の取得を正確に取得できるセンサー」「車をどのように制御すべきかを決める人工知能」の4つで構成されています。

一般的な地図は、平面的な道の情報を示すものですが、高精細地図は数センチ単位の高精度なデータです。勾配も含めた3D情報で構成され、さらに、車が走れる車線の位置や走れない路肩情報、自車の位置を推測しやすくするための道路標識やビルなどの目立つ目標物なども収録されています。各自動車メーカー、地図メーカーが独自に作っていては効率が悪いため、日本では、自動車メーカーを中心として「ダイナミックマップ基盤株式会社」が設立され、共同開発しています。

周りの情報を正確に取得できるセンサーは、人間の「眼」に相当するものです。「カメラ」「ミリ波のレーダー」「LiDAR(ライダー。Light Detection and Ranging)」などを組み合わせて構成します。

カメラの映像は、人工知能で画像処理し、歩行者や信号などを識別します。これは主に2次元の情報から識別します。対して「ミリ波のレーダー」や「LiDAR」は、周辺に、それぞれ電波とレーザーを出し、その跳ね返りから周囲の物体を調べる仕組みです。これらのセンサーは3次元の情報を取得することができます。
ミリ波のレーダーとLiDARを併用する理由は、距離と精度の問題です。ミリ波のレーダーは電波を使うため気象状況が悪くても周囲を調べられますし、遠くまで確認できます。しかし高い精度を出せません。それに対してレーザーを用いるLiDARは、高い精度を出せるのですが、悪天候下では使えない可能性があります。

人工知能は、こうして集めたさまざまな情報を元に、状況を判断し、アクセルやブレーキ、ハンドルやウインカーなどを制御します。

実現できること

  • ・目的地を入力すると、自動で連れて行ってくれる車
  • ・乗務員がいないバスやタクシー
  • ・自動で荷物を運んでくれる宅配トラックやデリバリーロボット

将来の展開

自動運転には、5段階のレベルがあります。

レベル1 運転支援。自動で停止したり、前の車に追従して走ったり、車線のはみ出しを防止するなど。アクセルやブレーキの自動化
レベル2 特定条件下での自動運転。高速道路における追い越し、合流などを自動で行うなど。アクセルやブレーキに加え、ハンドルの自動化
レベル3 (2020年目標)条件付き自動運転。高速道路など限定した環境下において、すべての運転操作をシステムが行う。ただし、突発的な事象が発生したときは人間の介入が必要
レベル4 (2020年目標)特定条件下における完全自動運転。特定の条件(たとえば、特定の地域やイベント会場など決められた範囲)において、完全に運転者の介入なしに走ることができる。
レベル5 (2025年頃)完全自動運転。完全に自動運転できる

現時点でレベル1は、衝突しそうになったときにブレーキをかける「衝突被害軽減ブレーキ」や、前の車との車間を空けて(割り込まれたらさらに車間を空けて譲り)走る「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」という機能名で、すでに多くの車に搭載されています。レベル2はハンドル操作が自動化され、高速道路などでの「手放し運転」を実現します。すでに一部の自動車で実現しています。レベル2では、周りの状況を判断するのは人間の仕事です。

いま各社がこぞって研究しているのは、レベル3の技術です。レベル3はカメラやレーダー、LiDARなどを活用して周辺状況を把握しながら自動運転を実現するものです。

すでにレベル3の自動運転は、さまざまな場所で実証段階に入っており、2021年ホンダからレベル3自動運転を行う車が発売されました。高速道路の渋滞時、ノロノロ運転で走行しているときに、人に代わりシステムが運転を行っています。ただし、レベル3の自動運転には高精細地図が必要なため、高精細地図が存在する限定的な場所(高速道路、主要幹線道路、タクシーやバスなどではその営業範囲地域内など)での利用に限られます。どこからどこへでも自動運転できるようになるのは、もう少し先になりそうです。

補 足

高精細な地図は、車の自動運転だけでなく、ドローンの自動運転にも使われています。
LiDARは立体物のスキャンができます。iPhoneの上位機種にも搭載されており、LiDARで撮影することで、周囲を3Dデータとして保存できるアプリがあります。

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