IPSJ情報処理カタログ #ジョーショリ

用語集

ナレッジマネジメント

なれっじまねじめんとKnowledge Management

概 要

企業のもつ情報や従業員1人1人の経験・ノウハウを、企業の共有知的財産とすることで企業全体の業務効率を向上させる経営手法の1つ。企業経営における重要な管理領域のひとつに数えられている。

解 説

ナレッジ(Knowledge)には知識や知見といった意味があり、企業の業務に関わるさまざまな幅広い情報を意味します。これらの情報を収集し、効果的に運用しようというのがナレッジマネジメントです。

ナレッジマネジメントを知るために、まず2種類の知識について知っておく必要があります。

  • 1 暗黙知……言語や図式といったはっきりした形として明示化されていない、個人がもつ経験やノウハウを暗黙知と言います。
  • 2 形式知……言語や図式で明示的に表された知識を形式知と言います。誰もが理解できるようにマニュアル化された知識です。

この2種類の知識について、「暗黙知」を「形式知」に変換して蓄積することで業務に活かそうという考えがナレッジマネジメントの根幹になります。

長年業務に携わっている従業員は一人一人が相応の経験とノウハウ(暗黙知)を獲得しています。しかし、これらの知識はこのままでは個人の業績を伸ばすことにしか役立てられません。もしこの知識を形式知化し、企業全体で共有できれば、企業全体の業績を伸ばすことができるでしょう。

そして、形式知を共有された他の従業員が、新たに獲得した知見を重ねていくことで更に洗練された知識へとアップデートすることができます。このような形式知知識(ナレッジ)の積み重ねのスパイラルを構築することが、ナレッジマネジメントには求められます。

また、ナレッジマネジメントにはITツールのサポートが不可欠です。

  • 1 グループウェア……社内で従業員同士の情報発信やコミュニケーションに用いられるツール。蓄積された文書がナレッジとなります。
  • 2 ヘルプデスク……従業員からの質問を他の従業員が答えることでFAQを構築していくツール。
  • 3 データマイニング……社内に存在するデータを分類、解析することで役に立ちやすくするツール。
  • 4 エンタープライズサーチ……社内のさまざまなデータを検索できるツール。

個人の暗黙知を形式知として共有するためのツールや、蓄積されたナレッジから適切なものを参照して活用するためのツールとして以上のようなツールが用いられます。

実現できること

  • ・業務の効率化。ベテラン従業員のノウハウが他従業員に伝わることで業務が効率化します。
  • ・新たなナレッジの獲得。既存のナレッジをヒントにして新たなナレッジを獲得します。
  • ・人材教育の効率化。業務に役立つナレッジは、そのまま人材教育にも役立ちます。結果として人材教育を効率的に行えます。
  • ・気兼ねのないノウハウの獲得。ナレッジにはさまざまなノウハウがデータとして文書化されているので、先輩や上司の手を煩わせることなく必要なノウハウを得られます。
  • ・従業員の均質化。文書化されているナレッジは従業員全体のスキルアップに繋がり、極端にスキルの低い従業員の発生を防ぎます。
  • ・業務の属人化を防ぐ。特定の従業員でなければ支障の出るような業務を減らすことができます。

将来の展開

高度経済成長期から2000年にかけて、日本企業の雇用形態は終身雇用が一般的でした。そのため各従業員は長い時間をかけて経験とノウハウを積み、その暗黙知をゆっくりと周知・継承させていく余裕がありました。しかし近年はいわゆる「働き方」が変わり、次々と職場が変わることも珍しくなくなりました。これでは企業にとって有益な知識が継承されないとして2000年ごろから重視されはじめたのがナレッジマネジメントです。

社会のIT化が進みビジネスにもスピードが求められるようになったことからナレッジマネジメントはますます重要になってきました。今後もこの傾向が変わることは無いでしょう。

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