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STORY

プロゲーマーを目指すならアメリカの大学も視野に
eスポーツ競技者に注目する大学

COLUMN

近年、eスポーツの人気が高まり、男女を問わずeスポーツ選手を目指す高校生が増えています。そしてさらに大学に進学後も、eスポーツと大学の勉強を高いレベルで両立させる学生も増えています。

かつてはプロゲーマーを目指す若者は大学に行かずにプロの競技者を目指すことが多かったのですが、近年はプロゲーマーと大学との関わりも深まっており、この記事では、そうした大学でのeスポーツ活動の動向について紹介します。

大学生eスポーツ選手や学生プロゲーマーも活躍

新型コロナウィルスによって大きなスポーツ大会が開けなくなったことで、近年はeスポーツ人口がさらに増えて、大学生eスポーツ選手や学生プロゲーマーも活躍しています。そして大学でもeスポーツと学業とを両立できる学生を表彰しています。

たとえば東京工科大学は「リーグ・オブ・レジェンド」の学生世界大会に連続出場する学生チームを広報しており(大学広報2019年10月30日)、徳島大学は「ウイニングイレブン」の公式eスポーツ世界大会で優勝した学生を表彰しています(朝日新聞 2020年11月26日)。これからもeスポーツと大学での学業との両立を目指す学生は増え続けるでしょう。

東京工科大学の学生が「リーグ・オブ・レジェンド」学生世界大会に出場するお知らせ

eスポーツ競技者が成長できる大学とは

オリンピック代表入りを目指すアスリートの中にも、大学に所属しながら競技に打ち込む大学生が大勢います。アスリートにとって大学選びは重要です。

まず、よいトレーニング施設があること、そして、強い相手との真剣試合が多く開催されることも大事でしょう(厳しくない環境では成長ができません)。

特に忘れてならないのは、トップレベルを引退した後も競技経験で得られたスキルを生かして活躍できるような「セカンドキャリア」につながる大学選びです。これはeスポーツでも同様で、eスポーツの強豪校で、さらにゲーム開発も学べる情報系の大学が注目されています。

eスポーツ競技者が情報系の大学でゲーム開発を学ぶことはいくつかの利点があります。まず競技者としての利点としては、ゲームの技術やゲームデザインを学ぶことでゲームを深く分析できます。さらに現代では、世界的なコンピュータゲーム開発は開発段階からeスポーツ競技種目になることも意識しており、ゲーム開発にとって競技者の視点はこれまで以上に重要になっています。

そして大学側の利点としては、ゲーム研究や実験に参加してくれる学生の幅が広がり、上級者から初心者まで多様なプレイヤー実験を大規模に行えます。

eスポーツ競技者をリクルートする情報系の先進校

現在、eスポーツの強豪校で情報系のゲームデザイン教育を受けることもできる有力校はアメリカに集中しています。中でもとくに目立っている「UCI(カリフォルニア大学アーバイン校)」の情報学部を紹介します。

UCIは公立大学ではじめてeスポーツ奨学金を設置したことで注目され、いまでは大学全体でも「ゲーマーのための最高の大学(the best school for gamers)」だと広報しています。

UCI is the BEST SCHOOL FOR GAMERS (2020年4月)

この広報動画に登場するのは、大学代表eスポーツチームへの大きな声援だけではありません。指導者やスタッフも登場し、その中にはeスポーツコーチや学生スタッフだけでなく、ゲーム研究者のスタインクーラー教授も登場しています。彼女はホワイトハウス入りしたこともあるゲーマー研究の第一人者で、彼女のような国を代表する第一線のゲーム研究者から学べることがUCIの情報学部を特別な存在にしています。

UCIに入学を許された者はeスポーツ奨学金に申請でき、その詳細はオンラインで公開されており、奨学金制度だけでなく大学代表チームへの支援、応募の目安となるランキングも示されています。オーバーウォッチやリーグ・オブ・レジェンズのランキングを競っている人はチェックしてみるとよいでしょう。

UCIのeスポーツリクルートページ

こうしてeスポーツの先進校は、さまざまな環境を整えています。たとえばゲームやゲーマーについて研究する情報系の専攻、大学キャンパス内にあるアリーナ、レベルの高いチームメイト、プロのeスポーツコーチ、強敵との真剣試合を数多く体験できる大学対抗リーグ戦……といった環境を整え、世界中から学生を集めています。

今年は新型コロナウィルスのために日本からの留学が困難な状況にありますが、こうしたカレッジスポーツ 環境のチェックは国内の大学選びにも使えます。さらに、こうしたカレッジeスポーツ先進校と交換留学を行なっている国内大学もあるので、ぜひ調べてみてください。

多様性のためにeスポーツができること

UCIは高校生ゲーマー向けの活動も行なっており、過去には中学校高校から女子生徒を集めた夏休みのeスポーツ講習会を開催したこともあります(地元ニュース)

このイベントにはUCIの現役学生eスポーツ選手も参加していました。なぜ女子生徒向けの手引きが必要なのでしょうか。それは、eスポーツが体格差と関係なく男女が対等にプレイできる競技なのに、参加を諦めてしまう女子学生が多いからです。

しかし、これからeスポーツは男女差別なき競技になる可能性をもっています。そしてeスポーツプレイヤー(特に学校代表に選ばれるプレイヤー)には、男女差別あるいは健常者と障碍者の壁を乗り越えるためのモデルになることも期待されていると言えるでしょう。

女子生徒を集めた夏休みのeスポーツ講習会のお知らせ

[参考文献]
山根 信二 「世界の研究教育機関から」
第1回: カリフォルニア大学アーバイン校のeスポーツプログラム(前編)
福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC) (2021.1.25)
https://www.ferc.jp/news/yamb20210125/

山根 信二

記事を書いた人

山根 信二

東京国際工科専門職大学 デジタルエンタテインメント学科 教員、NPO法人 IGDA日本 理事・アカデミックSIG幹事。 大学院から情報科学、デジタルゲーム研究を学び、現在は次世代ゲーム開発者教育に従事しつつ、ゲーム開発者との共著論文も執筆している。 情報処理学会、IEEE Computer Society 会員。日本初のHEVGA(全米ビデオゲーム高等教育機関連合)会員。

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